ルドンとその周辺―夢見る世紀末
の 感想文
目玉、頭、まなざし。 力のこもった版画集。 『夢のなかで』1879 『エドガー・ポーに』1882 『起源』1883
ちなみに、『さかしま』ジョリス・カルル・ユイスマンス著(河出文庫)の表紙は、 ルドンの『ゴヤ頌』《U 沼の花、人間の悲しげな顔》
岡本太郎を思い出す。タッチは全く違うが。 太郎は最終的に目玉に向かったのに対して、ルドンは目玉から出発したのね。
《守護天使》黒鉛 最初に目が行った。 ちょっと離れた所から見ると、デッサン用にざっくり面を切った石膏像みたい。
《絶対の探求…哲学者》(1880年)木炭 この絵もひかれた。 図録によれば、黒い太陽なのね。 目玉にしか見えなかった。
《蜘蛛》(1887年)リトグラフ 笑う蜘蛛。 泣く蜘蛛もどこかにいるらしい。ここには来てない。対で見たい。並べたい。
《眼をとじて》(1890年)リトグラフ あんなに目玉が好きだったのに、目をつむっちゃうの。なぜ。 油彩バージョンよりこっちが好き。
『夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』1891 《Vうつろいやすい光、無限に吊るされたひとつの顔》リトグラフ 会場に、タペストリーというのか暖簾というのか、薄手の布で作られた大きな《蜘蛛》がさげられていましたが、思い切ってこっちで作るのってどうでしょう。
『夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』1891 《Y.日の光》リトグラフ 窓を使った構成も効果的だけど、それよりも樹、樹の葉っぱ。チャーミング。 端のほうにあるのは頭蓋骨かな。
《樹》(1892年)リトグラフ あって嬉しいポストカード。
地味に丁寧に描いてあるだけなのに、メルヘンな空気が漂ってる。
《ベアトリーチェ》(1897年)カラーリトグラフ ポストカード。実物も淡かったけどこの画像はさらに淡いです。
どうにもメルヘン。この絵は際立ってメルヘン。 女性を描くとなると、やっぱり色彩の必要を感じるでしょうね。
《薔薇色の岩》(1880年)油彩 岩の色はすごくいいけど、タッチが今ひとつルドンじゃない。 油彩のベタッとした感じはルドン向きじゃないのかな。
《まなざし》(1889-93年頃)パステル、木炭、チョーク まなざしよりも、被りもの。 まだ目にこだわってた時期なのかな。制作年がはっきりしないあたりがいい。 画材も絞りきれてないあたりが、またいい。
《神秘的な対話》(1896年頃)油彩 ポストカード。
空。青い空とピンクの雲とのコントラスト。 どうもこの辺から、目玉どころか顔すらはっきりしなくなってくる。
《ポール・ゴビヤールの肖像》(1900年)パステル 服。背景。髪。
《黒い花瓶のアネモネ》(1905年頃)パステル ポストカード。実物の背景は、もっと紫寄りで濃かった。という記憶。
アネモネよりも、青紫の背景。背景のざざっと描かれたタッチがいいのです。 青紫、好き。
《グラン・ブーケ》(1901年)パステル ここにも青紫の花、ちらほら。
ガラスや照明のせいか、作品実物を見ているというより、大きな画面で画像を見ている気分でした。
ルドンはパステルでしょう。パステルの、このタッチ。ルドン。ルドーン。
油彩だったら、オレンジがかった黄土色がいいかな。図録では赤みが強くなっちゃってたけど。
ルドンの周辺。周辺のパンチ効いてる人々。
マックス・クリンガー 『手袋』(連作、全10点)(1881年) ストーリーが膨らむ。じょうずな文章をつけた本があれば読みたい。 正直、絵だけだとそこまでこなかった。魅惑的なんだけど。
ムンクとゴーギャンの部屋は、さすがというべきか、パワーを感じました。 他の部屋とちょっと違いました。
エドヴァルト・ムンク《マドンナ》(1895‐1902年)カラーリトグラフ 他2点。
ポール・ゴーギャン《ステファーヌ・マラルメの肖像》(1891年)エッチング、ドライポイント、紙 おおマラルメ。ジャコメッティが好きだったそうな。 ゴーギャンは全11点。
(マラルメについてちょっとでもかじろうとする埴子。『マラルメの火曜会 世紀末パリの芸術家たち』の読書感想文)
ちなみに、『マラルメ論』ジャン=ポール・サルトル著(ちくま学芸文庫)の表紙もルドン。
題名不明。本展には出てなかった。
画家の友人として詩人の名前がちょこちょこ出てくる。 絵と詩は近いのかしら。 絵には詩が必要なのかしら。
どんな人工物にも思想が含まれていないはずがないと思うけど、 芸術に含まれているのは思想と言うより詩なのかな。
『究極はすべてポエジーだ』ジャコメッティ。アーティスト。 『深い思想は詩を要求する』矢内原伊作。哲学者。 (出典「ジャコメッティとの対話」 参考 「ジャコメッティとともに」の読書感想文)
哲学も突き詰めると詩になる。 突き詰められた哲学が芸術には含まれている。 おお、あったじゃないか《絶対の探求…哲学者》。ルドンに戻った。ルドン。ルドーン。
ワグネリアンのアンリ・ファンタン=ラトゥールみたいに、音楽が必要な画家もいる。 音楽をエネルギー源にしてストーリーを描き出す。 ラトゥールは4点ありました。 この人のタッチに見おぼえが、と思ったら、去年みてました。(参考 森と芸術 の感想文)
絵、詩、哲学、思想、音楽、すべての創造がぐーるぐる。マーブル。
ところで、どの画家も、本人が恐らくはあんまり意識せずにつくった部分に、その人の一番の魅力があらわれるような気がする。
画材や技術との相性もあるだろうけど。
展覧会は、おすすめです。
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関連グッズなどについて。
図録は、館内で見せていただいただけなのですが、色が赤すぎる気がしました。 グラン・ブーケが載ってなくて、あれー と思ったら、この美術館でしか展示されてないからなのね。 この展覧会が巡回展だったことに気づく。
代わりにグラン・ブーケのみのリーフレットが販売されています。 図録とセットでも、単品でも買えるようです。
まずないだろうと思っていた「樹」のポストカードがあって大喜びの埴子。 ルドン展のショップは会場内、1F。ショップを出ると最後の展示室。
グラン・ブーケのポストカードは会場外のショップにあったようです。見つけられなかった… 両方に置いておけばいいのに。まあもういいや。
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混雑状況報告。 混んではいませんでした。 グラン・ブーケ独り占め可能。 2012/01/27(金)、15:45−18くらい。 うろうろして、ルドンの作品は4回くらい見ました。
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まぼろし美術館
いざゆかん ひるむことなかれ 2匹の蛇を連れているなら
コツコツコツコツコツコツコツコツ
ここにもそこにもバルタン星人 寸断されてる夢見た世界
コツコツコツコツコツコツコツコツ
立つ押すかざすの3種の魔法 駆使して世界をつなぎ直そう
コツコツコツコツコツコツコツコツ
ここからそこから湧いて出てくる のぼせた悪魔の忠実な使徒
コツコツコツコツコツコツコツコツ
斬っても斬ってもきりがない あの光る眼を見てはいけない
コツコツコツコツコツコツコツコツ
猫に生まれてくればよかった 嘆きの天使は赤い靴
コツコツコツコツコツコツコツコツ
踊る阿呆に見る阿呆 踊れなくていいせめて見たい
コツコツコツコツコツコツコツコツ
抜き足差し足忍び足 泥棒気分で逃げ帰る
お裁縫は ゆううつだ 蛇も食べない古い羊羹
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このページの画像はすべて、埴子が撮影したものです。 |
2012/01/27訪問
2012/01/29up
2012/02/24更新
会場|三菱一号館美術館 会期|2012年01月17日 〜 2012年03月04日※2月27日開館 休館日|月曜日 開館時間|水・木・金 10:00―20:00 / 火・土・日・祝 10:00―18:00 入館料|一般:1400円
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