ジョルジョ・モランディ ―終わりなき変奏
の目撃談 (2016の05)
モランディは平面の人と思う。 曲面ではない。
今回、ほとんどの作品のタイトルが≪静物≫。 もともとタイトルがついていなかったのでしょう。 混乱を避けるため、本展のカタログ番号を付しました。
No.11≪静物≫1954年 油彩 個人蔵 中央に静物を配置した構成。 右側の溝のある曲線的な瓶はだめだが、左に置かれた4つの四角い物体が良い。 平面の塗りが、なぜか良い。 背景とテーブルが良い。
曲面は苦手だったのではないか。 溝のある瓶に一筆置かれた白、光を表したつもりらしいが、欠けているかのようだ。
静物画は、セザンヌに近づこうとしているのかもしれない。 『すべての形態は円筒・円錐・球からなる』というセザンヌの考えを極めようとした感がある。
円筒形の物体も、悪くはないが、四角い物体に比べると落ちる。 球は、ぜんぜんだめ。
本展一番はこれ。
No.18≪静物≫1952年 油彩 個人蔵、モランディ美術館(ボローニャ)寄託 気がついたら、この絵の前で立ち止まっていた。ということが、数回あって驚く。 全体に白みが強く、他よりも明度が高いせいもあるかも。
No.29≪静物≫1948年 油彩 マニャーニ・ロッカ財団(パルマ)
No.33≪静物≫1955年 油彩 ルチアーノ・パヴァロッティ・コレクション、モランディ美術館(ボローニャ)寄託 チラシ表の作品。 左に寄った配置が珍しい。やはり2つの四角い物体の面が良い。
円錐形のじょうごは、あまりよくない。 逆さにしたって、よくないものはよくない。
と思ったが、水彩の逆さじょうごはけっこういいな。 No.37≪静物≫1956年 水彩
No.41≪静物≫1953年 油彩 影が良い。
ペルシャの扁壺は本体が四角いので、モランディ向きのモチーフだ。 No.52≪静物≫1957年 油彩 モランディ美術館(ボローニャ)
No.53≪静物≫1930年 エッチング モランディ美術館(ボローニャ) No.78≪5つの器のある静物≫1956年 エッチング モランディ美術館(ボローニャ)
エッチングはちょっとおもしろい。でも油彩のほうがいい。
No.72≪静物≫1951年 油彩 モランディ美術館(ボローニャ) チラシ裏左下の作品。 チラシ裏左上の作品とは水色の瓶以外モチーフ同一らしい。 左下のこちらの絵のほうがいい。塗りが丁寧で、背景やテーブルがいい。
ちなみにこの絵の前で図録をめくった。 この絵の水色の瓶の色が異様に濃くて、ショックを受けた。 見せてもらっておいて、なんですが。
一番後ろに置かれた水差し、黒く塗られたものはカラスに見えてしまった。
鉛筆画は良い。エッチングよりこっちだ。 No.80≪静物≫1960年 鉛筆 トリノ市立近現代美術館、グイド・エド・エットーレ・デ・フォルナリス財団
風景画も、セザンヌの影響が強い。 無駄のないセザンヌ、というところか。 本展では少なめ。もともと少ないのか?
モランディは、自然物より人工物が良い。
No.87《フォンダッツァ通りの中庭》1954年 油彩モランディ美術館(ボローニャ)蔵 No.88《フォンダッツァ通りの中庭》1958年 油彩モランディ美術館(ボローニャ)蔵 家の壁面が良い。
花の絵はぱっとしない。 花瓶を全部書いていないものは、モランディの良さが出ていない気がする。 贈り物として描き、あまり表に出さなかったらしい。正解。
1枚だけ、いいと思った。
No.96《花》1950 年 モランディ美術館(ボローニャ)蔵 バランス、花瓶のたたずまいが良い。 ルオーの花や花瓶に近いかな。
|
展示室の壁に、モランディの言葉。
日本語と英語の表記でした。 本人の言葉なのだから、原語のイタリア語が良いのでは? 読める人が少なくても、日本語と併記するわけだし。
量は、多すぎずよかったですが、配布の解説の紙にこれらも載せてほしかった。
解説は、どうも書き手個人の推測や思い込みが強めと感じた。
|
『ザ・コレクション・ヴィンタートゥール』でモランディの作品を見たとき、もっと見たいと思った。 ようやく、まとめて多くの作品を見ることができて、満足。 やっぱり好きだな。
最初の衝撃にはかなわないけど。 参考感想文 ザ・コレクション・ヴィンタートゥール
|
セザンヌ。 どこで絵を見ていても、気がつくとセザンヌがいる。 この人のすごさを、じわじわと感じる。
|
家を描いたものは、セザンヌよりもホッパーの雰囲気がある。 ホッパーはアメリカの人だけど。交流? なさそう。 時代の空気かな。 と思って調べたら、
エドワード・ホッパー(1882年-1967年) ジョルジョ・モランディ(1890年-1964年)
なるほど同時代。
|
混雑状況報告。
空いてはいませんが、並ぶほどでもないです。 ただ、13時ころだったか、急に人が増えました。
どの絵も独占できます。 じっくり見たい絵は、タイミングを見て。
ここ東京ステーションギャラリーのルートは 1階でチケットを購入(その後ロッカー利用など)し、もぎってもらい入館し、 エレベーターで3階に上がり、 3階の展示室を見てから、 階段で2階に降り、 2階の展示室を見て、 階段で1階に降りる という手順になっています。
再び見たい場合、エレベーターを使って戻ることもできると思いますが、煩わしい。
今回は、3階と2階の間の階段を2往復半しました。 さすがにそれ以上は大変なので、各階でぐるぐるまわったりもしました。 結局何回見たのか、よくわからず。
ショップは2階にあります。 チケットがないと入れません。 ロッカーに戻って荷物を取りだしてから買い物できます。 ここでも階段上り下り。
2016/03/05(土)訪問 |
いいもの好きなもの
繰り返し思い出す
何度でも
ジョルジョ・モランディ ―終わりなき変奏 会期|2016年2月20日(土)〜4月10日(日)
|
反すうする
何度でも
|