川端康成コレクション 伝統とモダニズム

於・東京ステーションギャラリー

の目撃談 (201611)

 

東京駅丸の内北口

見逃さない

その眼力

 

  

川端康成(18991972)のコレクション。

 

 

ベル・串田≪センチメンタル・ジャニー  ─神とともに≫1967

階段なのか坂なのか、蝶がのぼってゆく。

その先にあるのは西洋風の建物。アーチの先端がとがっている。教会だろうか。

油絵の具をたっぷり塗った後で削ったような絵。深くてつやのある緑が基調。

ちょっと気になる絵。

 

草間彌生≪雑草≫1953

縦横がこれでいいのかわからない、というような作品だが、なにか魅かれた。

草間彌生はほか1点。

 

 

古賀春江11点。

うち、墨で描かれた2作品がいい。

古賀春江≪牛と少女≫1929

古賀春江≪海の幻想≫

よく見たいと近づいた。

 

古賀春江≪煙火(はなび)≫1927

浮遊感。

 

古賀春江≪朗らかな春≫1930

タイトルと絵の印象がちょっと違う。

クレーっぽい。が、クレー作品の持つ突き抜けた感じはない。開かれてはいない。

そのせいか、色使いは淡い作品なのに、濃度は高い。

 

オーギュスト・ロダン≪女の手≫

全体は実物大より小さめ。

西洋の女の左手。親指が長めで少し反っている。

骨っぽさやごつさはない。軽く曲げた手はそれほど力んではいない。

そのあたりが川端好みなのか。

 

 

ピカソとルノワールのデッサンはどちらも女性像。

ぞれぞれのタッチが出ている。

 

 

東山魁夷16点。うち2点は装丁の原画で2階に展示。

本展で、はじめて東山魁夷の作品をいいと思った。遅まきながら、よさがわかってきたのかも。

 

東山魁夷≪雪降る≫1968

立ち飾りのついた冠に似ている。

黄金のアフガニスタン展で見た冠や、奈良県藤ノ木古墳出土の冠よりも、

茨城県三昧塚古墳出土の金銅製馬形飾付冠に似ている。

魁夷のほうは、馬じゃなくて木。冠じゃなくて雪をかぶった、山の上の木。

 

東山魁夷≪フレデリク城を望む≫1963

城と木々と空。でもそれを映す湖のほうが広い。

尖塔の先端はすっと空へのび、そのまま消えていくようだ。

 

東山魁夷≪晩鐘≫1971 スケッチ

近づいてよく見たら、天から尖塔へと光が降りてきている。

本画は北澤美術館にあるこちららしい。光がはっきりしている。神々しい。いかにも大聖堂。

 

本展のスケッチは、よく見ないと気づかないくらいの光であるところがいい。

 

東山魁夷≪静宵≫1967

山の後ろから、月が昇ろうとしている。夜が始まるおごそかな時。

 

東山魁夷≪月影≫1966

魁夷がよく描く木々とはちがい、この作品の竹は、整然と並んでいない。

竹の根と地面。月そのものは登場しないが、ところどころ明るい。

 

「光る地面に竹が生え……」萩原朔太郎の「竹」を思い出した。

 

そういえば、「竹取物語」の川端康成の現代語訳を読んだ。わりとあっさりした文章だった。

 

東山魁夷≪マリアの壁≫1971

マリアは左の入口の上にいる。彫刻を描いたものとはいえ、人物は珍しい。

それ以上に、構図に驚いた。

 

どの絵も静かで澄んでいる。

動きはかすかで激しさはないが、木と木の間の暗がりに、なにかがありそう。

 

古賀春江より東山魁夷のほうがシュルレアリスム的。

 

東山魁夷

上から≪晩鐘≫はがき

≪北山初雪≫チラシ

≪フレデリク城を望む≫はがき

 

 

川端康成≪自画像≫1916

するめと呼ばれていた頃のものらしい。三角に足。足は二本。

この絵のような、マント風のコートを愛用していたのか。

なぜイカではなく、するめなのか。やせていたからか。コートが古びていたからか。

ともかく、この自画像はなかなかの作品。

 

ロダン≪女の手≫を見つめる、するめ君こと川端康成

 

高井貞二≪抒情歌≫1937

コラージュ風。「抒情歌」の挿絵らしい。絵の下に手書きの引用。

読んでみた。覚えがないので「抒情歌」は読んだことがないらしい。読んでみよう。

 

 

いよいよ埴輪。3点ありました。出土地は記載なし。不明らしい。

 

鳥形埴輪2

1体はとさががあるから鶏。

もう1体はとさかがない。羽が表現されている。広げてはいない。水鳥かな。

しかし小さい。ともに、くちばしから尾羽まで10cm程度。

中空ではないようだし、埴輪というより土製品。

埴輪に共通する空気は持っているが。

目以外の穴はなぜあけられているのだろう。

頭の斜め後ろに一つ、とか、耳なら対にするだろうに、不思議だ。

 

図録の写真は角度に工夫がなく、1体は目さえ映っていない。

残念でならない。

 

女子埴輪頭部1

「丸い」と川端が言う通り、頭が丸い。頭しかないのだが。どこから見ても丸い。

関西の埴輪だろう。そういえば川端も関西の人だ。

狙って作られていない顔。かがんで見ると、かすかなほほえみ。ああ埴輪。埴輪だ。

いい色。全身が残っていないのが、残念でもあり、それはそれでいいような気もする。

この埴輪は、誰が見てもよいものと感じるだろう。その証拠に、公式サイトとチラシに登場。

  

埴輪さんとするめ君

 

葉書もあったので入手。

 

2013年の列島展で見た仁徳天皇陵古墳出土の女子埴輪に似ている。

発掘された日本列島2013 の埴輪目撃談

顔の丸さも、残った後ろ髷の厚みも、首の細さも。ちゃんと鼻の穴があるところも。

前髷と、首から下が失われていることまでも同じ。

 

目は違う。仁徳埴輪は目頭も目じりも角度がついたアーモンド形。川端埴輪は楕円形。

耳も違う。仁徳埴輪は写実的で頭にしっかりついている。川端埴輪はのの字の粘土紐。

 

川端埴輪のほうがかわいいが、横顔は仁徳埴輪のほうがいいな。

川端埴輪は穏やかで、仁徳埴輪は言葉にできない思いを抱えているような、複雑な表情。

 

ちなみに、川端康成がこの埴輪が欲しくてトレードした青磁の器はこちら。

アジアギャラリー(東京国立博物館 東洋館)の目撃談

 

鳥形埴輪は2体まとめて一つの展示台、女子埴輪は単独で展示台に置かれていた。

どちらも、ぐるり360度から見ることができてうれしい。ありがたい。

斜め上、斜め下からもじっくり見た。

 

 

土偶

いわゆるハート形土偶。

しかし顔の形よりも、目のつくりに目を引かれる。

両端がくぼみになっている。ボタンの穴みたい。中央を残して眼球をあらわすためか。

鼻の穴の長さ。これも両端がくぼんでいる。

後ろ頭を支えるV字。どうしてこの形なのだ。

 

 

アフガニスタンの仏頭があった。ここにもあった。

黄金のアフガニスタン(東京国立博物館)の目撃談

素心 バーミヤン大仏天井壁画(東京藝術大学) の目撃談

アフガニスタンものらしく、各地の要素が含まれているが、ギリシャ彫刻寄りと感じた。

 

 

尾形光琳≪松図≫

もちろん松がいいと思って足をとめたのですが、

その次に(表装の地模様が竹。松なのに竹?)とぼんやり思う。

 

その後ショップではがきを見たら

 

 

松の上下(たぶん一文字とよばれるところ)の黒地に赤い花が。

 

 

これは梅? 松竹梅ってこと?

だとして、誰が表装したの? 川端?

 

 

池大雅≪春景山水図≫

点と線で描かれた山と川。

その中に、小さく描かれた人々。つい探す。

舟をこぐ人。あずまやに集う人。

顔なんかないが、愛すべき人間たちとわかる。

大雅だなあ。

十便図もいいけれど、こちらのほうがよかった。

 

図録は青がきつくて、いくらなんでもひどいわ。こんなの大雅じゃない。

 

 

明恵成弁≪夢記断簡≫

ここで明恵の夢日記に会おうとは思わなかった。

しかしよく考えたら、夢に興味のない作家はいないだろう。

ちらっと見ただけで、読まなかった。読みにくい。急いで夢を書き留めたのか。

 

 

岡鹿之助≪雪国 定本≫(装丁)1971

点画、以前見たルドンのリトグラフ《樹》(1892年)に似ている。

参考感想文 ルドンとその周辺―夢見る世紀末

でもルドン作品は展示されておらず。川端コレクションにないのかな。

と思ったら、ショップのポストカードにあり。持っているらしい。

 

 

安田靫彦≪『川端康成全集』表紙画画帳≫

装丁された全集も下に並べられていたが、黄緑があまりよく出ていない。

バッタとか、葉っぱとか、原画では鮮やかで、重要な色なのに。

コピーはここまでか。こんなもんか。仕方ないのか。

 

コピーを欲しがるところがもう間違いなのか。

コピーに耐える文字情報は強い。書はまた別。

表紙画よりも中身。といって、顔のない身というものはない。

電子書籍に表紙は不要か?

 

ところで、安田靫彦は名前に靫が入っている。埴輪を思い出す。

 

 

 

手紙類。

公開してしまうとは。ということは置いておいて。

 

川端から伊藤初代への手紙。

紙面いっぱいに文字が書かれている。それなのに投かんしなかった。

そして捨てずにとっておいた。

 

太宰治から川端への手紙。

これだけ自己主張が強くて、こんなに面白かったら、どのみち作家として成功すると思う。

本人はそうは思わなかったのかな。

行間も字間もあけ、紙をぜいたくに使って書いている。

読みやすい。それも重要なことだ。

 

 

手紙類は別として、コレクションについて。

時代、地域、素材、技法はさまざまでしたが、統一感がありました。

やはりひとりの人間が集めたからでしょう。

なんでもみんなでやるのがいいとは限らない。

 

 

 

祖父・川端万邦の≪構宅安危論≫も展示されていた。

易学をやっていた人らしい。

 

最晩年の祖父と康成とのやり取りの文章も並べられていた。

 

そういえば、祖父のことが出てくる話をいくつか読んだ。

 

自死する際、川端康成は祖父の姿を思い出したか。

 

 

  

 

混雑状況報告。

空いていました。

3階の彫刻の部屋は、一人で3分くらい過ごしました。

他、どの作品も独占可能。

 

 

 2016/05/13(金)1300-1500訪問 

 

 

荷物を1階のロッカーに預け、エレベーターで3階へ。

3階を 2周、階段を下りて

2階を 2周、階段を上がって

3階を 1周、階段を下りて

2階を 1周、階段を下りて

1階で荷物を取り、階段を上がって

2階のショップで買い物、テラスで撮影。

 

この東京ステーションギャラリー、時間と体力がなければ堪能できません。

 

 東京駅の歴史をぐるり

 大正時代の東京駅の手すり

 

南北ドーム3階回廊ブラケットの 月の満ち欠けの透かし

 

 南北ドームの装飾リレーフ

(上)菱の実

(下)エッグ&ダート

 

 

美術館や博物館はたいていそうですが。

 

魅力的なものが、ありすぎる。

  

 

   

右上 ベル・串田≪センチメンタル・ジャニー  ─神とともに≫

 

川端康成コレクション 伝統とモダニズム

 

会場|東京ステーションギャラリー

会期| 2016 423()619()

 

     

    

 

このまえの目撃談 (201610)

企画展 偶像(アイドル)の系譜 および 常設展(國學院大學博物館) の目撃談

 

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新収蔵品展(埼玉県立さきたま史跡の博物館) の目撃談

 

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