http://analyzer5.fc2.com/ana/icon.php?uid=940009&ref=&href=&wid=0&hei=0&col=0

 

殿塚・姫塚古墳発掘60周年記念 甦る九十九里の埴輪群像 ―3D考古学の挑戦―

於・早稲田大学會津八一記念博物館

の目撃談 (201624)

 

 

  

本展では人物埴輪のみ。それがむしろ贅沢。

ほぼ完形のものが12体も並んでいると、壮観です。

 

以下、カッコ内の番号は展示No.

 

1)アゴヒゲの武人(姫塚古墳出土)

ヒゲ埴輪の中でも、特にひげが立派。

立派すぎて、首がない。

美豆良(みずら)は顔の横でモコモコして外に跳ねる。

垂れた小さい目。わずかに開いた一文字の口。

顔の印象はご老人。

だが、左手には大きな大刀をしっかり持っている。

帽子に見える被りものは、後ろは開いていて、支えがある。

三角冠なのか? 鍔はぐるりと360°に広がっている。

あごの下、上着の胸に、赤っぽい色で、鋸歯紋が描かれている。

帯の下から広がる裾には、鋸歯紋が線刻されている。

全体に黒ずんでいる。これは彩色か経年の汚れか?

 

高さ138.6cmと本展では最も高さがある。

もっと大きい、高さ165cmの埴輪が、同じ姫塚から出ている。

おそらく最大の人物埴輪。

連れてきてほしかったな。写真には載っていた。

 

2)アゴヒゲの武人(人形塚古墳出土)

脚結の結び目に、赤い顔料で+印。

袴のひざ下、左右の裾のもようが違って見えた。

左は鋸歯文、右はうろこ紋。に見えた。

くつの縁に、短い線刻(刺突というらしい)が縦に並ぶ。

縫い目を表したか。

 

3)アゴヒゲの武人(人形塚古墳出土)

脚結の結び目、ボタンのような平べったい円柱を二つ重ねて、上のボタンは赤く塗られている。

袴のひざ下、赤い水玉模様。

ヒゲは胸につかずに浮いている、という解説だったが、壁ケース入りだったのでよくわからず。

ともかく、姫塚の(1)とは違い、衿より短い。

 

4)首飾りをする女子(経僧塚古墳出土)

前に伸ばした手は、しっかり五本の指がある。

指は粘土の板に乗っている。内側から細い指を守っている。

手首から垂れさがる袖。

赤い顔。

耳、左右で位置がずれている。

首飾りは、丸玉と勾玉を連ねている。

解説では丸玉と書かれていたが、これを丸玉と呼んでいいのか。

ボタンのような平べったい円柱なのだが、

真ん中を押してくっつけたらしく、真ん中がへこんでいる。白玉だんご状である。

ともかく二種の玉が交互に連なっているのだが、向かって右端だけリズムが違う…

そして後ろは、ない。

いいのだ。それでいいのだ。それでもいいのだ。

ずっしりした埴輪。坐像かもしれない。

 

5)甲冑を着けた武人(小川崎台3号墳出土)

指の大きな手。腕は短い。手が肩についているみたい。

前に這い出ようとしているかのようなポーズ。

でもおそらく、ポーズよりもアイテムが重要。

甲冑を身に着け、彼は戦っているのだ。

おそらく。彼と呼んでは見たものの、美豆良がないのが気になる。

 

6)琴を弾く男子(殿部田1号墳出土)

ばちで琴を弾いている手よりも、胡坐をかいている足のほうが大きいのでは。

えらい前傾姿勢だ。

前に突き出している大きな頭。左右に広がる振り分け髪。

髪を振り乱して、琴をかき鳴らしているのか。

美豆良はしっかり紐でくくってある。

 

7)双脚の男子(小川台5古墳出土)

武具が一つもない!

甲冑なし、大刀・弓矢なし。

かといって、鎌・鍬などの農具も持っていない。

ちょっと珍しい。

でも美豆良はしっかりついている。

そして何より、足がしっかり二本ある。

しかし、二本足埴輪にはたいていある円筒台がない。

かなり珍しい。

赤みの強い粘土。

  

8)両手を広げる女子(木戸前1号墳出土)

エプロンにしか見えない、前に突き出したものを身に着けている。

そのエプロン状のものには鋸歯紋。交互に赤い彩色。

大きな木でも抱えるように、広げてから前に突き出した腕、というか手。

左手は欠損しているが、右手は指がしっかりある。

目と口は、角の丸い四角。ポストの穴をもう少し丸くした感じ。

訴えかけてくる。特に口元。歌っているのか。祈りを唱えているのか。

 

9)丸い帽子を被った武人(旭ノ岡古墳古墳出土)

なんてチャーミング。そしてこのボリューム。存在感。

九十九里型と下総型が混ざっている。

文化と文化の境界で、ただの組み合わせではなく、融合がなされた。

 

境界。それは埴輪。埴輪そのもの。

 

でも混合が進むと、均一になってしまってつまらない。

にじみ具合が重要。

 

粘土板を貼りつけた顔に、釣り気味の細い目。口は横一文字。下総型。

横に広がった美豆良。

大きな顔に対して小さい丸い帽子。それで頭が収まるのかというくらい小さい。天辺に孔。

 

ボタン形の玉を連ねた首飾り。胸に垂れ下がる二列もボタン形。

 

独特の体形。

たいていの人物埴輪は、上半身が逆三角形かずん胴だが、彼はAライン。

胸からお腹に向かって、緩やかに広がっている。

さらに広がる上着の裾が、丸くふくらんだ太ももにかかっている。

袴は格子もよう。

 

足元は、修復らしい。くつのつま先が、全体のイメージに合わせてか、丸くなっている。

実際には、ヒゲ埴輪たちのように、つま先はとがっていたのでしょう。

 

10)天冠状のものを被りものをする男子(山田宝馬35号墳出土)

三角で天を指す被り物。鍔はなく、紐が巡っている。蝶型の飾り付き。

顔つきは、心なしか厳しい。

上着は白。

 

11)男子(山田宝馬35号墳出土)

白地に赤の水玉模様の上着。

 

12)男子(にわとり塚古墳出土)

肩から緩やかに降ろされた曲線を描く細い腕、指のない手先が外に開くなど、下総らしさ満載。

顔も典型的だが、下総型の中でも特に目が離れている。

 

 

殿塚・姫塚古墳発掘60周年記念の展示だが、殿塚古墳出土の埴輪は来ていなかった。

人物埴輪は姫塚より少なかったのかな?

 

 

どの埴輪も、かがんで下から見ると、やはり、ほほ笑んでいる。

埴輪だ。

 

ボタンのような平べったい円柱。

首飾りの玉や、紐の結び目などの表現に使われているが、実際はこうはならないはず。

埴輪だ。

 

 

 

だいたい再会埴輪だと思うが、日大で見た(9)以外、はっきり思い出せない。

芝山は埴輪が多いからなあ。

前に見たのはたしか2007年のはにわ祭の日だった。雨だった。

 

 

 (11) (12)の埴輪は、ともに「男子」と記載されていたが、女子ではないか?

 

解説文の「〜と推定されている」という表現から推察するに、展示側も迷ったらしい。

迷う理由たくさん。

 

美豆良(みずら)あれば、男子だが、美豆良なし。取れた痕も見当たらず。

ひげがあれば、まず男子だが、ひげなし。

被り物をしていれば、まず男子だが、被り物なし。

よろいを身につけていれば、まず男子だが、よろいなし。

くつを履いていれば、まず男子だが、くつなし。そもそも足なし。

 

ただし

髷(まげ)があれば、女子だが、髷なし。

胸があれば、まず女子だが、胸なし。

 

性器があれば、どっちにせよ明確に判別できるが、性器なし。

 

決め手なし。

 

だが

女子である確率のほうが高い気がする。

頭部の孔がなす角度が、髷の角度っぽいのだ。

そして孔には何かがついていたらしき痕がある。

 

確信は持てない。責任も持てない。

 

この場合は

「人物埴輪」とだけ表記すればよいのでは。

 

埴輪の性別判定は難しい。

 

 

 

「武人」だったり、単に「男子」だったり。

 

本展で「武人」とされている埴輪は、男子で武装している、という意味だと思う。

武具のない(7)については、武人とは言えないから、「男子」で正解でしょう。

 

境界線がはっきりしない。

 

まずは性別が重要。

大刀や弓を持つ女子埴輪は存在するので、女子で武人という可能性がある。

「武人」表記はなくし、「男子」「女子」のみでいいと思う。

 

資料名は分かりやすさが第一。

 

 

本展の目玉は、三次元だ。3D

埴輪は立体物である。

 

置いてあったiPadを触ってみた。

見学者がほぼいないのをいいことに、ほとんどすべての画像をぐるぐる回して見た。

後で気づいたが、iPadは受付で借りられたらしい。

 

埴輪に限りませんが、立体物の展示を見ていて、

壁が背のケース入りの埴輪など、後ろが見たいな、とか、

上から見たいな、とか、思うことしばしば。特に被り物。

三次元撮影して見せてくれるというのは、ありがたい試み。

すべての埴輪でやってほしい。

 

欲を言えば、アップで見せてほしい。

剥離痕があるかどうか、とかね。

 

実物を、ガラスなどなしで、近くで、照明しっかり当てて見る、が理想。

ちょっと無理か。

一展一体くらいならできる?

 

 

  

 

撮影は不可でしたが、図録で満足。500円。

個々の埴輪の写真は、なかなかいい出来です。

そして、(1)、(6)、(12)の前後左右の3D画像が載っていてうれしい。

  

 

 

会場では、解説文はざっとしか見なかったので、図録で復習。

 

6世紀の芝山では、大きめの古墳をたくさん造っていた。

埴輪も作っていた。

 

1956年、殿塚・姫塚古墳の初発掘。

埴輪ぞくぞく。

 

2012年、殿塚・姫塚古墳の測量・レーダー探査。

古墳くっきり。

 

埴輪の三次元計測。何年かは不明だが最近らしい。

姫塚古墳の埴輪は、三次元計測に加え、古墳での配列通りに並べた画像を作成。

これをきっかけに、展示も古墳配列通りにしたそうだ。

一目で6世紀に飛べる。大きな成果だ。

 

もう一度芝山に行きたい。

 

PEAKITとは? 多種の画像を選択的に重ね合わせて表示する技術。

重ねる画像は、対象物の特性に合わせて選べる。

「開度」画像が基本。

大局的特徴と、局所的特徴を、まとめて一つの画像で見せることができる。

 

 

 

 

混雑状況報告。

 

ほぼ独占状態。

もったいない!

人が押し寄せても困るが。

 

と思っていたら、出たところで団体さんに出くわす。

あぶなかった。

 

 2016/11/01(火)訪問 

   

 

殿塚・姫塚古墳発掘60周年記念 甦る九十九里の埴輪群像 ―3D考古学の挑戦―

会場:東京都 早稲田大学會津八一記念博物館 企画展示室

開催期間: 20161014日(金)〜1119日(土)

     

実は

埴輪のほかにもさまざまな展示がありました

「近世の禅書画 ―白隠とその会下―」だけ駆け足で見ました。

白隠慧鶴「布袋すたすた坊主」とか

遂翁元盧「寒山拾得図」とか

 

2階は省略。

 

    

 

このまえの目撃談 (201623)

ゴッホとゴーギャン展(東京都美術館)の目撃談

 

このあとの目撃談 (201625)

中野の遺跡 新発見伝(中野区立歴史民俗資料館)の目撃談

 

埴輪その他の鑑賞レポート・感想文

埴輪などなど目撃談

 

2010-2013のレポート・感想文はこちら

埴輪目撃談(2010-2013

アート感想文(2010-2013

 

 

埴輪のとなりTOP

 

 

inserted by FC2 system