デトロイト美術館展
於・上野の森美術館
の目撃談 (2016の29)
ドガ5点。 エドガー・ドガ《バイオリニストと若い女性》1871年頃 女性のスカートかひざ掛けかよくわからなかったが、その線がよかった。
踊り子あり、それ以外の人物画もありで、満足させる作品群。存在感。
ギュスターヴ・クールベ《川辺でまどろむ浴女》1845年 ルノワールの浴女も量感はあったが、クールベはもっと肉感的。
クールベはこの1点のみ。もっと見たい。
モネも1点のみで、ちょっと残念。
セザンヌ4点。 ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山》1904-06年頃 山腹にわずかに入る暖色が好みで、セザンヌではこれが一番。 どくろもよかった。
フィンセント・ファン・ゴッホ《オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて》1890年 タッチはゴッホらしく魅力的。特に川に映る船はよかった。 この船で死出の旅に出たか。など連想してしまう。 なにしろ人物の顔が青い。目がない、鼻もない。 まさに死相か。
オディロン・ルドン《心に浮かぶ蝶》1910-12年頃 油絵の具が厚く塗られた画面。 朱色の背景に、さまざまな色の蝶が彫刻のように浮き出ている。 ルドンには、花もしくは白黒のイメージを抱いていたので、この絵は驚きもあり印象に残った。
速水御舟の炎舞を重ねる人は少なくないだろう。 ルドンも御舟も蝶が正面から描かれ、デザイン的。琳派的。
エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー《月下の冬景色》 1919年 チラシに載っていて、見たいと思った作品。 実物は大きかった。 色彩は独特で強烈なのに、調和している。 キルヒナーはこの風景を実際に目にしたらしい。 木々や山々は、なんとなくムーミン谷を思い出す。
カール・シュミット=ロットルフ《雨雲・ガルダ湖》1927年 古いデジタルゲームの画面みたい。 大胆な構図と色使い。 ひとつの画面としてのまとまりがある。 もいちど見たいなロットルフ。もっと見たいなロットルフ。
マックス・ベックマン《オリーヴ色と茶色の自画像》1945年 陰影の中の目。への字口。 戦争の傷が顔面に色濃く残る。 しかし強い顔だ。
オスカー・ココシュカ《エルベ川、ドレスデン近郊》 1921年頃 以前見たココシュカ作品は何か不安を感じさせるものだった。 この絵は違ったので、ココシュカってこういう絵も描くんだ、と思った。 濃い目で明るい色の取り合わせ。穏やかだが弱さはない。 画面やや下で水平に走るオレンジ色が脳裏に焼き付いた。
もう一枚の《エルサレムの眺め》1929-30年は、広がる景色。 見晴らしのいいところから大きな町を見渡しているみたい。 ココシュカってこういう絵も描くんだ、とまた思った。 これはこれでいいんだけど、ココシュカらしさが薄れていっている気がする。
ピカソ6点。 パブロ・ピカソ《アルルカンの頭部》1905年 顔の左右の明暗差。 「青の時代」から「ばら色の時代」への移行期の作品、という解説。 アルルカンの衣装が、青とピンク。偶然? 襟は白。
どの絵も、やっぱり白がいい。 そして、どの絵も、目に入ったとたん、心を躍らせる何かがある。
画風が変転するピカソの、全期を通じての特徴は、白の良さと、抗いがたいチャーミングさ。
シャイム・スーティン《赤いグラジオラス》1919年 上から見下ろしたような花瓶から、広がる赤いグラジオラス5本。 スーティンにしては、バランスのとれた、落ち着きのある構図。 といってもスーティンらしさも感じる。グラジオラスの重さに対して花瓶が頼りないあたりに。 よい絵だ。
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ゴッホとゴーギャン、それぞれの自画像。
フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》1887年 いくらなんでも、ここまで黄色い麦わら帽子はないと思う。 が、だからこそ、パリに出て黄色に目覚めた頃の絵だということがわかる。 左の眼窩に光が当たっている。明るい。 光は黄色を輝かせる。
ポール・ゴーギャン《自画像》1893年 首に巻いたオレンジはスカーフか。鮮やかな色。緑となす縞もようも鮮烈。 でもそれ以上に顔に目が行く。 顔中心に描かれた自画像だから当然と言えば当然だが、 しっかり画面のこちらを見るまなざしに、強い意志を感じる。 茶色の髪は柔らかそう。
自画像の奥の壁に、ざっざっと描かれた人物画がかけられている。 解説によればドラクロワ作品。ゴーギャンが持っていた絵なのかな。見たい。
「ゴッホとゴーギャン展」にも各自の自画像があった。 ゴーギャンの1885年の自画像は、画家として立つという静かな決意を感じる作品。 ゴッホの《パイプと麦わら帽子の自画像》1887年は、 顔の向きが違うが、帽子と服の色は本展のものと同じ。本展の下描き、ラフデッサンか。
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52点と、大型の企画展にしては少なめ。 見終わって、もうちょっとあってもいいな、と感じたのも確かですが、 それ以上に、 よくぞ、この絵を選んで、日本まで持ってきてくれた! という作品が多く、良い展覧会でした。
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混雑状況報告。
撮影不可の日に訪問。 そのせいなのか、空いてはいませんでしたが、混んでもいませんでした。
チケット売り場、10時ごろ、行列なし。12時ごろ、数人。
午前の館内は、各作品独占可能。 ただし、章のはじめなど、配置によっては難しい。
2016/12/01(木)訪問 |
デトロイト美術館展 於・上野の森美術館 会期| 2016年10月7日(金)〜1月21日(土)
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展示を見る前に降っていた雨は
美術館を出ると上がっていた
黄色い銀杏の葉が
青空を背景に輝く
樹の根元の黄色いじゅうたんも
陽光を反射して12月とは思えない明るさ
ゴッホは確かに現実を見て、現実を描いていた。
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