特別展 人体 ―神秘への挑戦―
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目撃談 (2018の16)
医学、そのなかでも解剖学の歴史。 スタートはローマ帝国のギリシア人、ガレノス。
ダ・ヴィンチのデッサン、絵心があるせいか、アート作品に見える。紙の古さも一因か。 ほかの人の絵はそうでもなく、観察記録的。 アンドレアス・ヴェサリウスの解剖図譜『ファブリカ』は、ライトなシュルレアリスム。
ところで、2世紀のガレノスから15世紀のダ・ヴィンチまで、えらく時間があいている。 解説はちゃんと読んでいないが、どうも宗教的理由らしい。人体が神のものだった時代。 だとすると、『ファブリカ』はかなり挑発的では。よく刊行できたね。
キンストレーキ(「人造遺体」)、女性の胸部分が白い。脂肪だからか。 紙製と聞いてピンとこなかったが、紙粘土で作ったと聞いて納得。 蝋製は高価でもろいのだそうだ。
爬虫類の心臓、二心房一心室だけど、心室を二つに分ける壁ができかけている。
ハンドウイルカの肺と心臓、ぎゅっとまとまっている。水中で暮らすためだそうな。
アライグマの腎臓、サイズも形もまさにそら豆。単葉腎。
キリンの胃は4つ。どれも大きい。吊り下げられて展示。革袋みたい。
脳の神経線維模型、生け花みたい。
萬年甫のネコ脳ゴルジ染色切片、リンゴみたい。 ゴルジ染色による神経細胞突起拡大模型、数学の模型にこんなのがあったような。 『猫脳ゴルジ染色図譜』手描図譜原図 、『猫脳ゴルジ染色図譜』(刊行物)、きれい。 オールオーヴァーの現代美術作品みたい。
ところで、萬年甫(まんねんはじめ)というお名前、初心忘るべからずみたいでいいお名前。
マッコウクジラの脳、大きい、と思ったが、体に対しての比は、アジアゾウとくらべると小さい。 水中で暮らすためか。
人の脳が体に対し異様に大きいのは、特殊な発達を遂げている証拠らしい。 体内で消費されるエネルギーの20%は脳で使われているらしい。 人類はどこに向かっているのか。 神さまがゆるい賭けをしているのか。 勝っても神さまは報酬なんかいらないだろうなあ。そもそも勝ち負けの基準がないか。 神も知らない未来。
ヒトの骨格標本、男性は日本人で女性はヨーロッパ人だそうな。 それでは比較がしにくい、と思ったが、肩のあたりははっきり違うのが分かった。
ヒトの大腸、もちろん染めてあるのでしょうが、きれいなピンク。
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撮影OKゾーン。
NHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク」の人体観を表す
床の文字、例えば「腎臓」を踏むと 真上に腎臓の絵が浮かび上がる。
しかし、この展示は臓器そのものより 臓器同士の連携がモチーフらしい。
その辺の解説や展示がもっと欲しかった。 NHKのサイトを見たほうがよさそう。
チンパンジーの頭骨 骨になっても愛嬌がある。 眼窩の上が飛び出している。 鼻の下が長い。
縄文人頭骨 縄文時代(岩手県 宮野貝塚遺跡出土) こちらは、眼窩の上は飛び出していない。 代わりに頬骨やあごが目立つ。 面長。
この違い。
もう一体の縄文人。 復顔のためのゲノム解析を行った船泊23号人骨 縄文時代(北海道 船泊遺跡出土) あたまに「23」と書いてある。 宮野貝塚遺跡の縄文人頭骨と比べると、あごが小さい。丸顔。
ゲノム解析によってこの人の情報を調べて顔を再現してみたら 船泊23号の復顔像 女性だった。
とすると 宮野貝塚遺跡の縄文人頭骨は男性のものか。
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人体展、といいながら、動物が大活躍。 人体の探求は、動物なしではできない。
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正直、期待したほどの感動が得られず、拍子抜け。 ある程度までは見知っているからか。
臓器と、感情や思考との関連については特になかったように思う。展示が難しいか。 解剖する体はすでに死んでいるからか。 その点、ヌード展は、人体そのものではないが、生きている人体をあらわす。イカロス以外。 ヌード NUDE —英国テート・コレクションより および コレクション展(横浜美術館)の目撃談 そのせいなのか、人体展を見ているときにヌード展を思い出すことはなかった。 人体展は、実物を目にする貴重な体験ができたことはよかった。 はっとする感動体験、ということになると、ヌード展に軍配を上げます。
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混雑状況報告。
そんなに混んでいませんでした。 チケット購入も入館も、行列なし。 館内はすいてはいませんが、ほとんどの展示は行列せずに見ることができました。 人体の臓器のいくつかは、入口に断り書きがあります。 やや狭い別ルートになっているので、そこだけは並ぶこともありました。 といっても5人程度です。
観客は、美術系の展示にくらべ、男性が多めでした。 結果、老若男女のバランスがとれています。
2018/5/15(火)訪問 |
◎特別展 人体 ―神秘への挑戦― 於・国立科学博物館 開催期間:2018年3月13日(火)〜6月17日(日)
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常設は見ませんでしたが
屋外展示の空飛ぶシロナガスクジラ。
全長30m。
メスだそうです。
なぜメスを作ったのか。オスではなく。
オスだと大きすぎる?
いや
逆らしい。メスのほうが少し大きいらしい。
より大きいほうを再現した、ということらしい。