ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス
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目撃談 (2018の18)
ジョルジュ・ブラック(1882-1963)。 最晩年に取り組んだ「メタモルフォーシス」シリーズ。 Métamorphosesとは、変容を意味するフランス語らしい。
平面、陶器、ジュエリー、彫刻、室内装飾。 |
序章の絵画。
「静物」1911 おさえたトーンの黒と茶。そのなかに、物体が顔を見せる。 ブラック、というとイメージするのはこういった絵。
「楽譜のある静物」1927 カラフル。楽器や壺、光と影がくっきり分かれている。
第1章 平面
黒い紙にグワッシュで描いた作品は、立体作品の下絵らしい。 モチーフはギリシア神話。 「ボレアダイ」1963がよかった。
リトグラフは製作年代不明。 「アイグレー」「ボレアダイ」「ヘメラ」「ペルセポネ」がよかった。
第2章 陶器
「ペルセポネ」 黒と白、というか黒と素焼き色。 黒い釉薬を引っかいて描いたような、明と暗のペルセポネ。地上と地下か。 製作年は、チラシやサイトには1961-63とあった。出品リストには記載なし。
第3章 ジュエリー
「三つの恩恵(賛美神)」 恩恵を与えること、受け取ること、返すこと、の三つ。 受け取るのも美しいこと。 素材は18金とダイヤモンド、とあったけど、もう一つは何? 製作年は、サイトには1961-63とあった。出品リストには記載なし。
「ヘルメス」 金の針金で作ったヘルメスを、ダイヤモンドでかざる。
ヘルメスは、杖を手に、翼の生えたサンダルを履く。 その正体は生まれついての大泥棒で冥界の案内人。 背景がのみ込めない。エピソードをどこかで読んだと思うが。
ブラックのヘルメスは色彩を抑えていて、スマートでかっこいい。
「レウコテア」 ヒトデみたい。
「エウドラ」 太陽か、イソギンチャクか。
「ペルセポネ」 指輪のペルセポネ。金とカメオ。
第4章 彫刻
彫刻といっても、レリーフのような、厚みのある板状の作品群。 360度から見られることを考えてはいない感じ。 平面作品が浮き出してきて、凹凸を持った、という印象。
「メディアの馬車」ブロンズ 馬車と馬の手前と奥に、二つの車輪がつく。 二次元が三つ重なっている。
「アレイオン」ブロンズ 神から生まれた馬。目が二重丸っぽい。 何だか見てしまう。
「グラウコス」ブロンズ、アメジスト 魚になった海神グラウコス。 下半身や尾ひれは金色。 上半身はアメジスト。 色と質感の違いが生み出す迫力。 目は真珠かな? 海の深いところには、ほんとうにいるかもしれない魚。 本展いちばん。
そういえば 魚は板状ではないが、地上の動物にくらべると板に近い形状だ。 ブラックの彫刻向きの生き物か。
ガラス彫刻作品3点、光で色が映えて、引き寄せられる。 飴でできているみたい。
「ティトノス」ブロンズ 鳥になったティトノスは金色に輝く。背景は紫か。よく見えなかった。 壁画の一部のよう。
第5章 室内装飾
「ティトノス」装飾パネル 金色のティトノス再び。背景は紫。 彫刻の部屋のティトノスと連続している。 見くらべる。
彫刻のティトノスのほうがよい。
「半月鎌のある静物」1955-57 ジュマイユと呼ばれるステンドグラス作品。 背後から光を受けていた。 これもガラス彫刻同様、アメに見えた。
いままでガラス製品を見てもアメに見えたことはなかったのに、不思議。
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床に照明のあそび。魚が泳いでいた。デ・キリコ展を思い出す。 幾つかあったようですが、あまりしっかり見なかった。 作品に光るものが多く、床どころじゃなかったせいか。
そういえば、デ・キリコもギリシャ・ローマ神話をモチーフにしていた。 聖書より神話のほうが創作のモチーフになりやすいのか? キリストやマリアの図像は多いが、神話のほうが、創造の翼を広げやすいかも。 人体展の解剖学の歴史を思い出す。 信仰による縛り。
日本だとどうか。仏像・仏画。記紀テーマ作品は、ないことはない。 でもそれより山水画とか、自然描写が中心か。
今のモチーフは何だろう。ひらめきをくれるもの。
図録の写真は出来不出来の差が激しい。 全作品の撮りおろしは無理だったということなのでしょうか。
見終えて、もっとブラックの油絵がみたい、と思ってしまった。
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混雑状況報告。
世界博物館の日で入館無料だったので、ほかの日より混んでいたかも。 でも入館も館内も、行列なし。
館内は人多めでした。 女性率高し。 小さなアクセサリーのコーナーは、混み気味。 ゆったりめの行列に並んで見たり、空いている作品を先に見たり。 なぜかエアポケットができて、ひとつの章をほぼ独占していたこともありました。
二周。入館自由な状況を利用して、いったん出て、ショップを抜けて、また入ってみました。
2018/5/18(金)訪問 |
◎ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス 開催期間:2018年4月28日(土)〜6月24日(日)
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