プーシキン美術館展 ―旅するフランス風景画
於・東京都美術館
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目撃談 (2018の19)
第1章 近代風景画の源流 グランド・ツアーでイタリアへ。 神話、神殿。廃墟。 ある意味、フランス人によるイタリアの発掘。
ジャック・ド・ラジュー《狩猟後の休息》1742 木にくくりつけたブランコ、楽しそう。
雅宴画、人がカリカチュア的なのはいいとして、花がつくりものっぽいのが気になった。
クロード=ジョゼフ・ヴェルネ《日没》 1746年 船を押す人が良い。 この絵は、対の《日の出》とともに、淡いオレンジ色が目を引いた。
ユベール・ロベール《水に囲まれた神殿》 1780年代 ポセイドン神殿、実際の状態より崩して描いたらしい。 ユベール・ロベール展で見たほどには空の色がよくない。 だが、醸し出すものが他の人の作品にはなく、やはりいい。
第2章 自然への賛美
ジュール・コワニエ/ジャック・レイモン・ブラスカサット《牛のいる風景》19 世紀前半 二人の画家の共作。 牛だけでなく、羊もいる。空がよい。木は画面から浮いている。
ジャン = バティスト = カミーユ・コロー 《夕暮れ》1860–1870 年 木の葉がもやのよう。 フランスとイタリアが混ざった風景とのこと。
ジャン = バティスト = カミーユ・コロー 《嵐、パ = ド = カレ》 1870 年頃 空が広いが雲で重い。
ギュスターヴ・クールベ 《水車小屋》 1864 年頃 –1870 年代半ば ざらっとした筆致。太い筆にたっぷりとった油絵具で、勢いよく描き上げたか。 白い壁の照り返し。まぶしい。 水は濃紺。 故郷のオルナンの風景。
1873年、クールベ、スイスに亡命。
ギュスターヴ・クールベ 《山の小屋》 1874 年頃 白いアルプスが陶器のようだ。つやつやとして、立体感がある。 ただ、山としての立体感とは違う。 ほかの箇所も盛り上がって光っているところあり。
クールベの、油絵具の使いかた2パターン。
アンリ = ジョゼフ・アルピニー 《女性のいる森の風景》 1870–1880 年代 淡い緑がすてき。
第3章 大都市パリの風景画 光る石畳がパリ。
ルイジ・ロワール 《パリ環状鉄道の煙(パリ郊外)》 1885 年 画面の上半分は煙でいっぱい。 煙のむこう、地平線の近くが白く光る。夕焼け? 広い道路も光る。 煙たさと湿気を感じる。 画面が大きいこともあって入り込めそうだが、入ると馬に蹴られそうでもある。
アルベール・マルケ 《冬のパリ、サン=ミシェル橋の眺め》 1908 年頃 ロワールの煙と並んで展示されていたマルケの煙。こちらもよかった。 密度の高そうな黒い煙と白い煙が、頭をもたげる。
アルベール・マルケ 《パリのサン=ミシェル橋》 1908 年頃 2点あったマルケ、ともによい。 川面のサン=ミシェル橋が揺れる。
第4章 パリ近郊―身近な自然へのまなざし
クロード・モネ 《草上の昼食》 1866 年 すてきな幹、に、いたずら書き。矢の刺さったハートにP。 Pって誰? プーシキン? 木陰に集う人々のかるい倦怠。 空の色は濃すぎて気にいらない。
クロード・モネ 《陽だまりのライラック》 1872–1873 年 ピンクのライラックに引き寄せられる。 近づくと水色のライラックも見える。 女性たちも見えてくる。小さな日傘をさしている。 木の影は濃く、日は当たってなさそうだが。
ポール・セザンヌ 《ポントワーズの道》 1875–1877年 濃い緑がよい。
アンリ・マティス《ブーローニュの森》 1902 年 真ん中の道は紫。 黒い木々は輪郭線のひとつのようだ。 ところどころに白が効果的に入る。
モーリス・ド・ヴラマンク 《オーヴェールの風景》 1924 年 空の白、左の家の壁の白。 右の木は左上へとなびく。 ヴラマンクだ。
第5章 南へ―新たな光と風景
このあたりから類似性が目に付く。 特にセザンヌっぽい作品多し。
ポール・セザンヌ 《サント= ヴィクトワール山、 レ・ローヴからの眺め》 1905–1906 年 本家。 山と家はわかるが、空さえゴツゴツしている。セザンヌの目はどうなっているのだ。 その空の色がよい。
第6章 海を渡って/想像の世界 ふたたび旅へ。今度はイタリアじゃないらしい。東らしい。
ポール・ゴーガン 《マタモエ、孔雀のいる風景》 1892 年 マタモエとは、死を意味する言葉らしい。 解説によれば「文明化されたヨーロッパ人としての自身の死」を示唆しているとのこと。 色の波の中に、人と孔雀。
アンリ・ルソー 《馬を襲うジャガー》 1910 年 馬が正面を向く、という構図になぜしたのか。 少し斜めから見ると、緑の葉の筆あとが光る。懇切丁寧に描いた。
ジャン・リュルサ《東方の風景》 1927年 奥へ向かう左右の壁は定規で引いたみたいな、ザ・遠近法。デ・キリコを思い出させる。 空の色、青と灰色と茶色。 手前の緑は草のようだが石ころのようでもある。
レオポルド・シュルヴァージュ《赤い人物のいる風景》1927年 コラージュ風。マグリットを思い出させる。 雲もコラージュしたみたい。
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混雑状況報告。
チケット売り場に並ぶのは数人。 入場制限なし。 館内は混雑。
特に、比較的小さめの絵が、比較的詰まりぎみに展示されている第1章、第2章。 順番通り最前列で見るには、並ぶ必要あり。 順番にこだわらないなら、やや後方から眺め、すいているところだけ前に出て見る。 うろうろしているうちに全部見れる。
二周。
2018/5/24(木)訪問 |
◎プーシキン美術館展
於・東京都美術館(東京・上野公園) 会期:2018年4月14日(土)〜7月8日(日)
於・国立国際美術館(大阪・中之島) 会期:2018年7月21日(土)〜10月14日(日)
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