ムンク展 ―共鳴する魂の叫び
の
目撃談 (2018の39)
エドヴァルド・ムンク(1863-1944)。 ノルウェー出身。フランスのパリ、ドイツのベルリンなどで活動。
思ったほどさむざむしくはない。 色あざやかだし、体温を感じる。
月の柱。 赤い空。 橋。 海。
星が花みたい。
母や姉を早くに亡くした。叔母に世話してもらう。妹は精神を病んだ。弟も先立つ。 エドヴァルド・ムンク本人は80歳まで生きた。 時々入院した。入院中の写真あり。絵あり。
生涯独身。
女性像がうまい。 ムンクはもてたようだがトラブルにも見舞われた。左手中指の先を失う。
自画像をよく描いた。 若い時から最晩年まで、本展では11点が出展。 ほか、写真やムンク本人らしき絵などもある。
《青空を背にした自画像》 1908 油彩、カンヴァス 精神的にきつかった時期らしいが、この絵は青空のおかげもあってか爽やか。
《病める子》1894年のエッチング1点、1896年のリトグラフ2点 姉の横顔。病んでいるが、美しい。 キャプションによれば「一つの突破口」となるテーマだったらしい。
《アウグスト・ストリンドベリ》1896年 リトグラフ 枠に女性がいる。《マドンナ》の逆バージョンか。
アウグスト・ストリンドベリ(1849-1912)。 スウェーデンの劇作家、小説家。
《ステファヌ・マラルメ》1897年 リトグラフ ムンクは交友範囲が広い。
ステファヌ・マラルメ(1842–1898)。 フランスの詩人。孤独を尊重した。が、火曜会を主宰した。 マラルメに傾倒する芸術家は多い。マネ。ルドン。ゴーギャン。ヴァレリー。ジャコメッティ。 そういえば、ルドン展でムンクの《マドンナ》を見たのだった。 以後わたしのムンクは《マドンナ》の人。
《夏の夜、人魚》1893年 油彩、カンヴァス 月が海に映る。月の柱ができる。
《ブローチ、エヴァ・ムドッチ》1903年 リトグラフ この絵の女性は魅惑的な美しさ。《マドンナ》につながるイメージ。 うねる髪。六角形の大きなブローチ。全体に装飾的。ポスターふう。 ずっと見ていられる絵。
《メランコリー》1894-96年 油彩、カンヴァス これは、《叫び》の序章である《絶望》のバリエーションか。 橋はない。 空はまだ赤くない。白い雲につやがある。 恋に破れた男。ムンクではなく、ムンクの友達らしい。
生命のフリーズ(frieze of life)とは? 《叫び》《マドンナ》《接吻》などが含まれる一連の作品群らしい。
friezeとは? 建築用語。水平に並ぶ部位らしい。
生命はつながる?
《叫び》1910年?テンペラ・油彩、厚紙 赤と黄色の空。緑と青のフィヨルド。橋。 後ろに2人の男性。フィヨルドに浮かぶ船。船も2艘か。静けさ。 叫びを聞いておびえている人とは、まったく世界がちがうように見える。 耳をふさぐほどの、この叫びが聞こえないのか。
ムンクが《叫び》の第1作目としているのは1892年に描いた 《絶望》らしい。 ムンクは《叫び》のイメージを感じたとき、疲れて気分が悪かったらしい。 暗い何かとの同調。ムンクは作品に昇華した。 最後の《叫び》はいつ描いたのだろう。
《絶望》 1894年 油彩、カンヴァス
左《叫び》、右《絶望》
どちらも橋の奥に2人の男性と、フィヨルドに2艘の船。
《不安》1896年 木版、手彩色 正面を向く人がおおぜいいる。みんなの不安?
《赤い蔦》1898-1900年 油彩、カンヴァス 建物の壁を這うツタが、血にしか見えない。 手前に立つ男は、血を吸い取られたかのようにげっそりしている。
《フリードリヒ・ニーチェ》1906年 油彩・テンペラ・ カンヴァス 201.0×130.0p 大きい。やや粗い絵だ。 叫びと左右が逆の構図。 赤と黄色の空。緑と青のフィヨルド。橋。ニーチェも橋の前に立つ。 ニーチェも叫びを聞いた? 耳は抑えていない。橋の欄干によりかかっている。険しい顔。
フリードリヒ・ニーチェ(1844年〜1900年) ドイツの哲学者。「神は死んだ」と言った。 晩年は精神を病んでしまったらしい。
ムンクはニーチェに傾倒していたらしい。 叫びはむしろニーチェの声か。
《接吻W》1902年 木版 一体化する男女。シャガールの彫刻を思い出した。 シャガール 三次元の世界(東京ステーションギャラリー) の目撃談
《月明り、浜辺の接吻》1914年 《森の吸血鬼》1916-18年 構図が共通している。木の幹、枝の緑。 接吻と吸血は背中合わせか。
《マドンナ》1895/1902年 リトグラフ 3点。どれもよい。
石版(マドンナ、吸血鬼U)1895/1902年 石版石(石灰岩) 石の両面を使う。文字通りの背中合わせ。 女性に対するイメージの多様さを垣間見る。
《別離U》1896年 リトグラフ 女の後ろ髪が男にからむ。 女の横顔。丸い飾りのヘアバンド。 切ないがきれいでもある絵。
《クピドとプシュケ》1907年 油彩、カンヴァス 男の頭、緑のテープを貼ったかのよう。
《マラーの死》1907年 油彩、カンヴァス 構図やタッチがいい。モチーフがあるらしい。
《すすり泣く裸婦》1913-14年 油彩、カンヴァス よい。 泣いてはいるが、力強さを感じる。 感情を発露させるエネルギーは強力ということか。 そしてうまい。プロポーションがちゃんとしている。 脚は胴体の色と違って白い。ストッキングをはいているのか。 その脚がなんというか、しっかりしている。 顔は髪に隠れて見えない。 背景の紫がかった色がきれい。ベッドらしき赤と緑も。 描き込み過ぎていないのがよい。うますぎるかも。 この絵だれの絵って見せられたら、選択肢にムンクは出てこないな。
《太陽》1910-13年 油彩、カンヴァス 輝き。光。未来。まぶしい。 舞台は《叫び》と同じフィヨルドなのだろうか。とてもそうは見えない。 宗教的なものを感じる。特定の宗教ではなく、何かへのつよい信仰心。
《真夏》1915年 油彩、カンヴァス のびのびした女性たちと、明快な色の海辺。
《夜の彷徨者》1923-24年 油彩、カンヴァス これはムンク本人かな? 画面の中から、こちらをうかがうような様子。
《星月夜》1922-24年 油彩、カンヴァス 色がよくてすてき。地平線の上にのびる紫色が好き。 とは思うけれど、ムンクは人物を描いてほしいなあ。
《犬の顔》1942年 油彩、板 待ってくれ。 犬ではない。 猿と人を融合させた顔に、むりやり犬の耳をつけたような姿。 最晩年に何を描いているのだ。 ひょっとしてこの犬の耳には叫びが聞こえているのか。
版画がよい。 木版画のテイストに引き付けられる。
写真が結構展示されていた。小さいが。 割と最近の人だな、などと思う。
自分を見つめ続けたムンク。 自分を通して人間を描いた。
ついに抽象へ走らなかったというようなキャプションあり。
本展いちばんは、ムンクらしくないが《すすり泣く裸婦》。 次点は《ブローチ、エヴァ・ムドッチ》。 《フリードリヒ・ニーチェ》も気にはなる。
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地下1階受付の左に看板と映像
ちゃんと見なかった映像。 本展展示作品の紹介らしい。
地下1階入口を入って左に4つのスクリーンあり。
動く。
音声はない。
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混雑状況報告。
並ぶことなく入館。
展示室内、混んではいたが、一点一点ちゃんと見られた。 気に入った作品は、一番前の正面でしっかり見た。 運がよかったのか、左側の《病める子 I 》を3秒独占。
むしろ移動するときに気をつけないと危ない。 杖の人と、なぜか大きめの荷物の人が目についた。 ロッカーが足りないのか。受付左は割と空きがあった。が小さい。 大きい荷物は入らない。大きめロッカーは少ない。しかたないか。
荷物を預けないのは買い物するつもりだからかもしれない。
ショップレジは20人くらい並んでいた。 レジが10くらいあるのでさばけていた。 人気のグッズは売り切れの品もあるもよう。
会場から出たらチケット窓口に行列。50人くらい。 窓口は3つくらい。
2018/11/22(木)午後訪問 |
◎ムンク展―共鳴する魂の叫び 於・東京都美術館 開催期間:2018年10月27日(土)〜 2019年1月20日(日)
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