堀内正和展 おもしろ楽しい心と形
および
コレクション展 モダンなフォルム
の
目撃談 (2019の05)
堀内正和(1911-2001)
会場の壁に いきなり 「はにわのこころ―心と形」 「造形行為は、心に形を与えることだ。それは精神の形態化である。」 (『坐忘録』1990美術出版社)
気になっていた展覧会、行くつもりではあったが、来てよかった。
文章が気になってしまうが、ともかく作品。
初期の具象彫刻。1930-40年代。 《K君の首》1931、《淳子の首》1946 ともにモデルの骨格がよい。
《壺をだく子》1947 プーさんみたい。
《行香(あんこう)》1948 牛のような背中。
さほどひかれない。 もちろんうまいが、まだ個性が出てない感じ。記憶にとどまりそうもない。 チラシに一つも載っていないのはそのせいだろう。
会場で配布されているパンフレットには載っている。
パンフレットの年譜より一部抜粋。 1933年、胸部疾患のため療養。 1937年、結婚。 1938-44年、フランス語、ラテン語などを学ぶ。 1940-45年、作品発表を中断。 1940-46年、児山敬一に哲学、芸術、宗教を学ぶ。
数学もやっていたらしい。もちろんそうだろうなと思わせる作品群。
《Cubi》1950 キュビズムの影響を受けた首だからこの名にしたとのこと。 他の誰かも作っていそうな形だし、洗練があまい。 平面と角度を意識しているところは、この人らしい。
《海辺》1951 ジブリ映画に出てきそうな形態。
《海の花A》、《海の花C》1952 ちょっといい。 らしいチャーミングさが出ている。でもまだまだ。 ところでこの二つ、花活けに使えそう。
「僕が自らの方法を自覚して彫刻を作りはじめたのは1954年、 鉄の溶接が出来るようになってからである。」 (『アート・テクニック・ナウ10 堀内正和の彫刻』1978河出書房新社)
《線 A》 1954 登場。画期的、記念碑的作品。 やっぱり魅力的だ。すごい作品だ。 運ぶ時のために取り外しできるようになっている、とのこと。
《作品 S》1961 波打つ鉄。
自分の脳の体操のつもりだから、作品の表情は不愛想そのもの、とのこと。 とある先輩に「知らんぷりしている彫刻」と言われたそうな。 (「ひとをだまくらかす楽しみ」『みづゑ』1967年11月、第754号)
Sは知らんぷりのS?
《D氏の骨ぬきサイコロ》1964 石膏とブロンズがありました。 ブロンズがいいな。 この作品のせいか、帰り道に見た水玉もようがサイコロに見えた。
《ウィンクするMiMiちゃん》1967 名前の意味はMiMiちゃんと見つめ合って、ウィンクしてみて初めてわかる。
ただ、この手のものは、おまけとしてはいいけど、メインにはなり得ない。
《Cubes et Tubes》 1966 四角い箱に現れた円柱がどんどん大きくなって、ついに四角を飲み込む。 円筒とよぶべきか、角筒とよぶべきか。
《表裏相入円錐》1961 このデッサンもあった。エンピツ書きだと風に舞う布のよう。
《海の風》1962 海が見える展示室に展示。 《表裏相入円錐》を横にしたような形。かざぐるま4分の1か。 海辺の美術館にはほしい作品。
《マラルディの角度による》1996 自分を「マラルディスト」と誇称するほど幾何学、とくに角度がらみのことが好きだったそう。 だが 私にはこのへんのこと、ピンと来ず。
1959年頃から円筒をもとにした彫刻を始めたらしい。 《円筒をななめに通り抜けるもう一つの円筒》1970 石膏/ブロンズ 通り抜けられているほうは、円筒というより円柱。 通り抜けているほうは、円筒。 もひとつ通り抜ける。 《ななめの円錐をななめに通り抜ける円筒》1971 強化プラスチック 円筒とは、区切られた空間。見えないが、ある。確立されている。
後で写真を見ると、通り抜け部分が口に見える。 通り抜けられた円柱が怒っているみたい。
《三つの立方体(線)》1977 木 見入る。淡い色で塗り分けている。 トビカンの屋外彫刻に、線じゃないほうがある。 どっちがいいか。迷う。
滑り込んだ立方体が創り出す角度は、109°28'、54°44'、35°16'。 これがマラルディの角度、ユーレーカ!
《三本の直方体(線)》1983 鉄 線状の直方体。 トビカンの線じゃないほうより、こっちが好き。
《三つの直方体B》1993、original 1978 木 ヒビが入っていた。むずかしい。 やっぱり鉄。
紙彫刻。 銀座での作品展の案内状を加工したものがあって、ちょっとひかれはしたものの、 「紙」というのがこの人っぽくないせいか、どれもはやく金属の作品にしあげてほしい感じ。 いくつかは、金属作品のもとになっているのでしょうが。
エッチングや素描。平面作品。
《舌戦》エッチング/素描 素描のほうに、「四角氏」「三角氏(さん)」とあった。
素描の、たしか《悪魔ばらい》というタイトルのもの。 縦に分割された女性像。 マグリットの作品に似たものがある。
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図録はなし。無料パンフレットあり。 ありがたい。 が 素描のタイトルなどは載っていない。 最終ページの写真に入っているものもあれば、写っていないものもある。
なにより、会場の壁にあった言葉、一部は掲載されているが、すべては載ってないのが残念。 ぜいたくか。
記憶をたどったメモ
見えないものを見えるものによって見せる 超感覚を感覚にうつす 美術家は まず目を閉じよ
東洋大学の広報誌らしき『白山哲学』とかいう雑誌より。
引用されていたエッセイ集『坐忘録』とか、作品集とか、ほしいが… ぜいたくなのよ。
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堀内正和を初めて知ったのは、作品を所蔵しているトビカンだった。 このとき、《線A》を見たのだった。 本展で再会。
そういえば『二科100年展』では、伊藤久三郎や長谷川利行にも出会った。 没後40年 伊藤久三郎展 ―幻想と詩情(横須賀美術館開)の目撃談 長谷川利行展 七色の東京 および常設展(府中市美術館)の目撃談
わたしには大当たりの展覧会だったことになる。
いまさらながら、二科すごい。
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コレクション展 モダンなフォルム
久米民十郎2点。 《Off England》 1918油彩、カンヴァス アーサー・G・ダヴ《黄金色の嵐》を思い出す。 目撃談 モダン・アート,アメリカン
《蝶と女》1919 絹本着彩 円い紋様が、以前見た《支那の踊り》の敷物を思い出させる。 全体は帯を思わせる。長さと絹のせいか。
三岸 好太郎 《海と射光》 1934 インク、水彩、紙 去年、油絵バージョンを見た。 モダンアート再訪 ダリ、ウォーホルから草間彌生まで(埼玉県立近代美術館)の目撃談 このインクバージョンのほうが、するどい感じ。
辻 晉堂 《詩人(これ我かまた我に非ざるか)》 木、鉄 1958 デ・キリコの《吟遊詩人》を連想せざるを得ない。 堀内正和と同時代の人で、いっしょに展示もしていたらしい。 今日ここでも、作品が同居する。
実はこちらの展示を先に見る構成。 この順序はどうか。 企画展の余韻がかき消されずに帰れるのはいいかも。 と言っても自分は2往復半くらいしたので、 どっちでも大差ないか。
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混雑状況報告。
当初、会場をひとりじめ。
最終的には5、6人。
2019/1/17(木)訪問 |
屋外作品
中庭に
並ぶこけしの長い影。
イサム・ノグチ《こけし》1951年
その後ろ
見覚えのあるシルエット。
《石人》1966年(オリジナルは、6世紀前半の扁平石人、岩戸山古墳出土、大分県日田市設置)
岩戸山古墳の石人は、別個体をトーハクで見ている。
これは下部に環頭大刀のような浮彫が見えたけど
気のせい?
柄が下を向いていることになる。
背中にユギ。
いやむしろ
背中がユギ。
空充秋《揺藻(ゆれも)》1985年
ちょっと堀内正和作品に似ている。
どんぐり発見
西雅秋《イノセンス-火》1991年
孔があいている。
伏せた船?
西雅秋《大地の雌型より》2003-5年
どんぐりの作者の船だった。
5点組のうちの1点。
もう1点を
その向こうに広がる海とともに。
海の色は一つじゃないことがわかる。
ひっくり返った船を
もういちどひっくり返して
どんぐりをのせて
どこかへ行こう
どこまで行こう
どんぶらこ。
旗は並ぶ。
旗たちの後ろに
また旗たちが並ぶ。
船にも旗を立てよう。
◎堀内正和展 おもしろ楽しい心と形 ◎コレクション展 モダンなフォルム
開催期間:2018年12月8日(土) – 2019年3月24日(日)
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