日本の素朴絵

於・三井記念美術館 出品目録

目撃談 (2019011)

 

  

のっけからご登場。

《埴輪》

めずらしいので見たかった埴輪。

猪を右脇に抱えているのは初めて見た。

 

ちなみに、猪を腰に着けている埴輪は見たことがある。

群馬県高崎市の保渡田VII遺跡から出土。

(後日、群馬県立歴史博物館の「集まれ!ぐんまのはにわたち」で再会→動物埴輪

 

本展の埴輪は出土地不明。いずれ関東出身でしょう。

猪を抱えていること以外にも、変わったところがある。

まず、二本足構造だが、足部分がない。

足首から先が、円筒台に溶けている。

台は低めで突帯1条。

脚結がない。力士埴輪のような脚。

だがウエストに巻かれているものは、左腰から紐の先が2本垂れているので、まわしではなく帯だろう。

 

頭部左右につくのはミズラか?

一番前のものは耳かも。

その後ろに横にのびる円柱がミズラだとすると、

そのまわりに巻かれた2つの輪は紐か飾り?

後方では帽子の縁にくっついている。

下げミズラの下端を帽子の中に押し込んだ?

実際、狩りをするのなら、下げミズラは邪魔かも。

 

背中に縦長四角形の剥離痕。

ユギを背負っていたのでは。

上部にわずかに粘土が残る。

 

右腕に猪を抱えている。

手は五本の指がしっかり表現されている。写実的。

 

抱えられた猪の脚、前後とも左足のみ。

蹄は二股で、後ろのほうに蹴爪がついている。

右脚はないが、体に剥離痕がある。

線刻された目は閉じているらしい。つり目。

 

人物に戻る。

左腕は前方に曲げて出す。なにも持っていない。

ひょっとしたら、弓を持っていたのかも。

背中がユギなら左手は弓が濃厚。

右手で射た矢で、猪を仕留めたか。

 

つり上がった大きな目。左右で違う形。

眉も上がっている。

埴輪の眉は一文字形が多い。

下がった眉や八の字眉もあるが、

眉があがっているのは少数派。

 

口は上に切り込みがあり、たぶん口唇裂。

左に上がっているのは、表情か。

 

埴輪の周りをぐるぐる回る。

かがんで見上げて、表情の変化を楽しむ。

 

ところで

出品目録には(猪を抱える猟師)と記載されていたが、

猟師と言い切っていいかどうか。

そして材質は「土器」となっていた。

粘土でいいのでは。あるいは素焼き。

 

 

埴輪以外にも面白いものがあった。

 

《御正体 三女神像》平安時代

三女神が点線で描かれている。

「蹴り彫り」という手法らしい。

平安時代の銅鏡だが、もっと新しいものに見える。

 

《男神・女神坐像 7軀》中世〜近世

171体のうちの7体らしい。

一木彫り。

背面から見たときの違いが面白い。

 

《狛犬(阿形)》陶製 白釉 江戸時代(17世紀)

キャプションにあった通り、

フジツボふうの眉、

貝殻のようなたてがみ、

シーサー感がつよい。

 

《狛犬(吽形)》陶製 鉄釉・白釉 江戸時代・寛延4年(1751

顔つきなど、どこかに埴輪の血を感じる。

体の刻銘が深い。

そこまで深くしなくてもと思うほど深く刻まれている。

おかげで製作年がはっきり分かるのだが。

 

《つきしま絵巻》 2巻 室町時代(16世紀)

線が簡潔で迷いがない。

 

 

山の大胆さ。

 

顔の目鼻は消えてしまっているものもあるが、

なぜかかわいい。

顔と手と脚の向き

 

建物からはみだしている。

 

キャプションより、柳宗悦の言葉。

「こんなにも無法に幼稚に描かれ」

ながら、

「まがひもなく美しい」。

 

似ている。

埴輪についての和辻哲郎の言葉に。

和辻哲郎は埴輪を「稚拙」と評した。

それでもなお

「あふれるように感情に訴えるものを持っていることは、否むわけに行かない。」

 

創作する人間の体内に脈々と受け継がれているものがある。

読み取る人間のなかにも、なにか受け継がれている感性がある。

 

ところで、素朴絵は室町時代に盛んだったらしい。

盛んというか、室町時代の作にいいもの面白いものがある、ということらしい。

 

《平家物語屏風》 61隻 室町時代(16世紀)

上部に風神らしき姿。その下に船。

海が荒れるのは風の神のせいか。

 

《十王図屏風》 81隻 江戸時代(17世紀)

下手だが見てしまう。

口元、独特の面白さ。

もともとはお手本の怖い表情の真似なのかもしれないが。

 

《夢記断簡》 明恵筆 鎌倉時代・建暦2年(1212

ここにも明恵の夢日記。

絵は、うまくはない。

人物がどっちを向いているのかわからない。

顔は斜め前を見ているようだが、体は右向きか。

これはほんとうに素朴。

 

《曲馬図(人間万事)》 仙豪`梵筆 1幅 江戸時代(19世紀)

いくつかあった仙香B

この絵は見物人たちの顔がかわいい。

 

《雲水托鉢図》 南天棒筆 対幅 大正時代

これはかわいい。

 

 

僧衣に笠と杖の托鉢の列を

濃い墨と薄墨を使い分けて描いている。

列の後ろに行くにつれ省略している。

 

 

素朴というのとは違うかも。

うまい人が余計なことをしないようにして描いた。

 

《騎牛吹笛図》 岡田米山人筆 1幅 江戸時代・文政3年(1820

これもうまい。

あぐらをかき横笛を吹く体勢の表現が見事。

服の線がいい。笛は細すぎ。

人物の顔に味がある。何より楽しそう。

牛は太い筆をざっざっと走らせて描いた感じ。

脚や角や目、力強い。

埴輪以外だと、本展いちばん。

 

《布袋図》 池大雅筆 1幅 江戸時代(18世紀)

無駄を省いて描くとこうなる、という絵。

いい大雅。

 

《大黒と福禄寿の相撲図》 耳鳥斎筆 1幅 江戸時代(18世紀)

相撲を取っているというより、抱き合っているようだ。

紅白の縁取り。お祝いの時に飾る掛け軸か。

 

  

 

図録、館内でめくる。

展示の埴輪の写真は二枚あり。

ほか、今城塚古墳出土の力士埴輪と、

出土地不明の人物埴輪頭部の写真が掲載。

 

展示埴輪は側面や背面の写真を載せてほしかった。

  

 

混雑状況報告。

 

ほど良く人がいました。 

作品独占も可能。絵巻はタイミング次第。

 

 2019/8/2(金)夜間開館時訪問 

   

 

日本の素朴絵

 

会場および開催期間

 

東京都 三井記念美術館

201976日(土)〜91日(日)

 

京都府 龍谷ミュージアム

2019921日(土)〜 1117日(日)

 

     

    

  

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