横浜美術館開館30周年記念
オランジュリー美術館コレクション
ルノワールとパリに恋した12人の画家たち
および
コレクション展
於・横浜美術館
の
目撃談 (2019の021)
ひとはけの
ひこうき雲
消えちゃった
さあ
行こう
画商ポール・ギヨーム(1891〜1934)。 その妻ドメニカ(本名ジュリエット・ラカーズ)。 ドメニカの再婚相手の建築家ジャン・ヴァルテル。 そしてもちろん、才能を見出され世に送り出された画家たち。 「ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」が成立。 オランジュリー美術館所蔵品の核をなすコレクション。
クロード・モネ《アルジャントゥイユ》1875 一見平凡な構図でモネのよさがないと思ったが、よく見ると水面がすばらしい。 漂う浮草。その合間のさざ波に、船や船のマストが映る。 空はあまりいいと思わない。 モネはこの1点のみだったが、その1点がよかった。
ポール・セザンヌ《りんごとビスケット》1879‒1880頃 本展セザンヌ作品いちばん。 りんごとビスケットは木箱の上。 木箱がつくる水平線は二本。 セザンヌの水平線がある絵は安定していい絵。 壁紙や木箱の模様が浮き出るように描かれている。 壁紙の淡い青、木箱の色はところどころでトーンが違い、上面は青みがかっている。 中央下についた木箱の留め具。 全体的になんともいい。 りんごは軟らかそうだし、ビスケットは変な色で、おいしくなさそうだけど。 セザンヌはおいしさは二の次なのよね。いいけど。
ポール・セザンヌ《小舟と水浴する人々》1890頃 横長。1:5ぐらいか。 始めから扉の上の装飾として描かれたらしい。 真ん中に配された船のマストが勢いよくのびる。 両脇に水浴の女性たち。 セザンヌにしては装飾的。 空のゴツゴツ感は、セザンヌらしい。
アンリ・マティス《若い娘と花瓶(別名:バラ色の裸婦)》1921 マティスは大きな窓のある絵が多い。 その中でこれがよかった。 赤と緑の面積が多すぎず、白が中心。 娘の顔は描かれていないが、画布全体が明るい。
アンリ・ルソー《椅子工場》1897頃 雲がうまくて驚く。工場などはルソーらしいテイスト。
アンリ・ルソー《嵐の中の船》1899頃 波が草のよう。 この船は沈まなそうな気がする。
アンリ・ルソー《婚礼》1905頃 めでたそうな空気はない。 しかし重々しさを出そうとしているわけでもなさそう。 ひたすら真面目に描いたというところか。 ルソーワールドの植物が良い。
オーギュスト・ルノワール《桃》1881‒1882頃 明るい桃。 セザンヌのリンゴと違っておいしそう。
オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル》1897‒1898頃 本展メインの《ピアノを弾く少女たち》よりこっちのほうが良いと思った。 結い上げられた髪。 楽譜をめくるクリスティーヌの表情。 壁にかかるドガの踊り子の絵。
オペラ座での恋の告白は花束で。 ルノワールの《桟敷席の花束》は花の色がくすんでいるように見える。 ふられたか。
パブロ・ピカソ《泉のほとりの女たち》1921 同タイトル、同年作の作品が2点。3人の女たちが横に並ぶ構図も同じ。
パブロ・ピカソ《布をまとう裸婦》1921‒1923頃 この量感。 大きな画布いっぱいに女が描かれているせいもあろうが、しっかりとした体積と重さ。 でも柔らかい。女も布も。 セザンヌの夫人の肖像とだいぶ違う。
アメデオ・モディリアーニ《新しき水先案内人ポール・ギヨームの肖像》1915 ポール・ギヨームの肖像画は3点。 キース・ヴァン・ドンゲンのもの、アンドレ・ドランのもの、モディリアーニのこれ。 モディリアーニがいちばんよかった。 写真を見ると、いちばん似ている。 画家側の思い入れがたっぷりのせいかもしれない。 ちょっと変わった人物だったらしいことが感じられる。
アンドレ・ドラン《台所のテーブル》1922‒1925頃 物体が強い。 くっきりした輪郭をもって、前に出てくる。 十字に配置し、意味を持たせているようだが、それはよくわからなかった。 この絵は立ち止まらせる。本展ドランいちばん。
アンドレ・ドラン《大きな帽子を被るポール・ギヨーム夫人の肖像》1928‒1929 展示室入口に飾られていた。 くっきりとしたパーツにしっかり化粧した、作られたような顔。 全体に線が強い。 ドランのこの時期の画風か、ドメニカのキャラクターか。 大きな帽子が顔にすこし影を作る。 体には光が当たっている。右の二の腕の輪郭はぼかされている。 壁にかかっている絵は《アルルカンとピエロ》(1924頃)らしい。 丁寧なタッチ。
《ポール・ギヨームの肖像》(1919)のほうは、ぼんやりした印象。 よく言えばルノワールタッチ。 描いた時期が肖像に向いていなかったか。
アンドレ・ドラン《座る画家の姪》1931 画面からこちらを見ている目が気になる。 ドメニカの肖像と同じく、後ろ側となる右腕の輪郭はぼかされている。
アンドレ・ドラン《黒い背景のバラ》1932 バラが浮き出てくる。 ちょっとマネを思わせる。
アンドレ・ドラン《道》1932 悪くないが、いちばんではない。 先日みたばかりのせいか、岸田劉生の切通しを思い出した。 没後90年記念 岸田劉生展(東京ステーションギャラリー)の目撃談 空のベタっとした青、道に落ちる長い影。
ポールとドメニカ2人の趣味が一致したのはドラン作品だったらしい。 本展でも作品数は一番多かった。 ドランをもっと推してもよいのでは。 知名度と集客力では圧倒的にルノワール、というのもわかるが。 思い切ってドラン展をやってみてはどうか。
シャイム・スーティン《白い家》1918頃[1933?] 赤い窓の覆いが目立つ。 家というより塔のよう。生きているみたい。 道が急角度で、果たして歩けるのか。
シャイム・スーティン《風景》1922‒1923頃 赤い屋根の家がのけぞる。 黄色い壁がバターかチーズのように溶けて、道へと流れだす。 こちらも歩けなさそうな急角度の道。 木々の緑は飛んでゆく。 嵐の中なのかと思うが、空ははっきりと青く雲はない。 スーティン目当てで来たせいもあるけど、これが本展いちばん。
シャイム・スーティン《グラジオラス》1919頃 スーティンのグラジオラスは、前にも似た構図の絵を見ている。 風景画や人物画があると弱く感じるが、本展のグラジオラスもいいグラジオラス。
スーティン展はぜひやってほしい。 倒れる人が出る危険があるけど。
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コレクション展。 さっと1回だけ。 その中で気になったのは岡田謙三。 特に《雨》(1959)が良かった。抽象と具象の間。 《垂直》(1964)もひかれた。 ユーゲニズム。 まえに見た《ナンバー2》(目撃談 モダン・アート,アメリカン)から気になっていた人。
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再入場について。
コレクション展から企画展に引き返す。 チケットを見せるとハンコを押された。再入場は1回のみかな? 再入場の時に出口(特設ショップ)から入ってしまった。 いったん1階に降りてから再入場すれば頭から見れたか。 以前の横美の展示はぐるぐる回れた気がするが。 ともかく、今回は企画展をゆっくり目に一往復半、コレクション展は一期一会。
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横浜美術館はショップのポストカードが充実していてうれしい。 例によってマグリットの持っていない1枚をみつけた。
フィリップス・コレクション展で知ったニコラ・ド・スタールのポストカードも1枚あってうれしい。 つながる。いつか実物を見たい。 ニコラ・ド・スタール展もやってほしい。
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キューブ。
キューブ・イズム。
キュビズム。
混雑状況報告。
ほど良い入り。 時間が遅くなるにつれ空いてくる。 独占は作品にもよるが数分なら可能。
2019/10/5(土)17〜19時ごろ訪問 |
◎横浜美術館開館30周年記念 オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち 於・横浜美術館 開催期間:2019年9月21日[土]〜2020年1月13日[月・祝]
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