印象派からその先へ
―世界に誇る 吉野石膏コレクション展
於・三菱一号館美術館
の
目撃談 (2019の026)
展示は作品リストの記載順ではなく、作家ごとにまとめられていた。
エドゥアール・マネ 《イザベル・ルモニエ嬢の肖像》 1879年頃 油彩/カンヴァス 99.3×75.6cm 画像はチラシより
格の違う肖像画。イザベルは美しく品があるのはもちろん、かっこいい。 マネはモデルの中のカッコよさを引き出して作品にする。 輪郭の後ろの黒の深さがマネらしい。
ウジェーヌ=ルイ・ブーダン 《アブヴィル近くのソンム川》 1890-94年頃 油彩/カンヴァス 61.0×50.0cm
曇り空と光。少しピンク色が入っている。 青空じゃないブーダンだが、良いブーダンだった。
クロード・モネ 《テムズ河のチャリング・クロス橋》 1903年 油彩/カンヴァス 73.0×100.0cm
テムズ川の上で踊る光。炎のよう。 この絵の前は人が多かった。 本展のモネいちばん。
クロード・モネ 《睡蓮》 1906年 油彩/カンヴァス 81.0×92.0cm
睡蓮の花は三輪、まだつぼみ。赤みがつよい。 ちょっと珍しい睡蓮。
アルフレッド・シスレー 《マントからショワジ=ル=ロワへの道》 1872年 油彩/カンヴァス 46.0×56.0cm
空、雲などよい。きれい。シスレーらしい。
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《赤いブラウスを着た花帽子の女》 1914年 油彩/カンヴァス 46.0×38.0cm
暖かい色合いの中、目の光が目立つ。
ジョルジュ・ルオー 《法官たち》 1908年 油彩/紙(カンヴァスで裏打) 77.5×56.5cm
初期の作品。 人が人を裁くことへの葛藤が描かれている、というようなキャプション。 細い線で描かれた眼鏡。
ジョルジュ・ルオー 《バラの髪飾りの女》 1939年 油彩/紙(カンヴァスで裏打) 71.0×61.0cm
ザ・ルオー作品。人は顔。 絵の具ののせ方に迷いがない。
ピエール・ボナール 《靴下をはく若い女》 1908-10年 油彩/カンヴァス 53.0×63.0cm
けだるい空気。それに溶け込みながらもしっかりとした存在感の女。
アルベール・マルケ 《ロルボワーズ》 制作年不詳 油彩/カンヴァス 50.0×61.0cm
空の雲のうねり。生き物のような。 ほどよい明るさ、ほどよい強さ。マルケのよさ。 マルケ2点のうち、こちらがよかった。
モーリス・ド・ヴラマンク 《大きな花瓶の花》 1905-06年 油彩/カンヴァス 104.3×52.5cm
ベストなヴラマンクではないが、インパクトがある。装飾性が高い。 ルドンの花瓶の花につながる。 先日見たゴッホの花を思い出す。
モーリス・ド・ヴラマンク 《花瓶の花》 1909年 油彩/カンヴァス 73.0×59.5cm モーリス・ド・ヴラマンク 《村はずれの橋》 1911年 油彩/カンヴァス 81.0×100.0cm
どちらもセザンヌの影響が見て取れる。偉大なる先人セザンヌ。 橋のほうはヴラマンクらしさも感じる。なぜだろう。白の入り方か。
アンリ・ルソー 《工場のある町》 1905年 油彩/カンヴァス 46.0×55.0cm
煙突から出る煙よ。釘付けにされてしまう。 しっとりとしたボリューム。つや。生クリームと綿あめを足したような。 道や建物はいつものルソー。さすがルソー。 目が離せない。
ジョルジュ・ブラック 《洋梨のある静物(テーブル)》 1918年 油彩/カンヴァス 65.5×79.3cm
楕円のキャンバス。テーブルには様々なものが山盛り。 中央に置かれた、孔のあいたものは、パレットか。いやギターか。 黒を塗った上に黄色を重ねているせいか、金色に見える。 ほか、オレンジ色のもの。キャプションに、キュビズム後に暖色を使い始めたとあった。 詩はあるがべたつかない。 ブラックはこの1点だけだったが、いい作品でうれしい。
パブロ・ピカソ 《女の肖像(マリー=テレーズ・ワルテル)》 1937年 油彩/カンヴァス 46.0×38.0cm
チェックの帽子。白い背景。 マリー=テレーズの瞳は物思いにふけっているようだ。 ピカソ3点中ではいちばんよかった。ピカソはやはり白。
マルク・シャガール 《逆さ世界のヴァイオリン弾き》 1929年 油彩/カンヴァス 92.7×73.0cm
赤い画面。 逆さの物の中では花と花瓶がよい。シャガールの重要モチーフのひとつ。
マルク・シャガール 《バラ色の肘掛椅子》 1930年 油彩/カンヴァス 72.4×59.5cm
窓際に置かれた肘掛椅子は、赤い模様のある布が張られたものらしい。 だが誰も坐っていない。 画家とその妻ベラは飛んでいる。 シャガールは窓枠につかまりながら、画架にかけた画布に筆をのせる。 その横顔は若くて明るい。 この後のシャガールの人生を知る観客はつらい。 開いた窓の向うは山。空は白くて広い。この白い空がなぜかよい。密度がある。 シャガールの窓はいいなあ。 《窓から見えるブレア島》(1924年)をもういちど見たい。(チューリヒ美術館展の目撃談)
マルク・シャガール 《夢》 1939-44年 油彩/カンヴァス 78.7×78.1cm
テーブルに二人分の料理。火をともした二本のろうそく。 画家はひとり。 高いところに、ろうそくがもう一本ともされている。 せつない。
マルク・シャガール 《サント=シャペル》 1953年 油彩/カンヴァス 100.0×81.0cm
鶏か人か。丸いのは月食? シャガールの青。
マルク・シャガール 《翼のある馬》 1962年 油彩/カンヴァス 115.3×80.7cm
翼は4枚ある。蝶のよう。
シャガールのモチーフ、花、花瓶、鶏、ヤギ、月。 本展では窓、馬、ヴァイオリンもあり。
シャガールが二部屋と充実の本展いちばんは、やはりシャガールの《バラ色の肘掛椅子》。 次点はブラックとルソー。
|
混雑状況報告。
第二水曜日の17時過ぎ。 女子割利用。 チケット購入に20人ほどの行列。 でも待ったのは10分足らず。
館内は心配したほど混雑していなかった。 一周目、マネのイザベル嬢を30秒くらい独占。 ルオーの煙突もブラックの楕円もそれぐらい独占できた。 モネの橋は独占できず。 人気と配置による。
二周目はもう少し混んでいた。 タイミングを見れば10秒くらいの独占は可能。
18:45くらいに会場を出ると、チケット購入の行列はなかった。 外は雨。小雨。
2019/12/11(水)訪問 |
◎印象派からその先へ ―世界に誇る 吉野石膏コレクション展
於・三菱一号館美術館 開催期間:2019年10月30日(水)〜2020年1月20日(月)
|